弁護士の需要を考える・その2

前稿「弁護士の需要を考える」に引き続いて、具体的な事例に基づいて弁護士の需要というのは本当にあるのか、あるとしたらどこに発生するのかといったことを考えてみます。

 

弁護士保険の普及

自動車保険や火災保険の特約として、弁護士保険が普及しています。

確かに、もらい事故では役立つ保険です。日弁連の新会長も弁護士保険の普及に力を入れるとか言ってた気がしますので、まあ、それはそれで頑張ってもらいたいと思います。

前の記事で訴訟が減っているという例を挙げましたが、交通事故案件は微増しているとの指摘がありました。これは弁護士保険の普及によるところが大きいです。但し、増えた主な部分は軽微な物損事件で、訴額が小さい事案で僅かな過失相殺割合の差を巡って血みどろの争いを繰り広げるといった様相が多く見られるのではないでしょうか。

この状況は合理的とは思えません。

もっとも、人身への被害について保険会社の提案水準が低いという問題はあって、弁護士を付けて争えばより満足いく可能性があるということで訴訟になる例もあります。また、保険会社サイドも、理不尽に突っ掛かってくる相手方に苦慮するような案件で、弁護士が入ることで処理がスムーズになることもあります。

そのような面では、弁護士保険が積極的な需要を掘り起こしている意義を認めても良さそうです。

この需要が減っていく社会変化があるとすれば、運転者支援システムや自動運転の普及でしょうか。

例えば、最近、富士重工業がアイサイト搭載車の事故率は非搭載車より低いとアピールしています。この減少率は結構インパクトがある数字ですので、そのような社会変化も見通して仕事を考える時期に差し掛かっているかもしれません。

さて、交通事故の負担から人々が解放される世の中がやってくるのはいつになるでしょう。

 

LACの問題点

なお、弁護士の紹介を行う日弁連リーガルサービスセンター(LAC)の制度は加入会社が増えていますが、保険会社サイドからの信頼が今ひとつではないかとの疑問があります。

この問題、弁護士保険の普及に力を入れるとか呑気に言っている場合ではなく、対策が急務です。

例えば、この制度には大手の一角を占める東京海上日動が入っていません。

同社は、弁護士保険案件で弁護士の紹介を要する場合には、自社のネットワークから弁護士を紹介する仕組みを作っていたはずです。LACでたまたま変な弁護士が当たると色々問題があることを懸念しているようにも感じます(それでも契約者が変な弁護士を連れてくる場合は有り得るのですが。)。

 

顧問弁護士とインハウス

企業や役所が顧問料を払って顧問弁護士を確保し、業務上の法的問題を継続的に顧問弁護士が処理することは普通に行われていますが、近年では、企業や役所が自ら弁護士資格者を採用して法的問題を処理させることも多くなりました。

いわゆる組織内弁護士(インハウス)です。

このような現象は、企業や役所のコストの削減という観点から大変意味があります。組織のコンプライアンスを強化する意味とかあるかもしれませんが、そこは結局経営者側の意識次第のように思います。

但し、一定の企業規模でなければコスト削減効果は限界があります。

ごく単純にいえば、インハウス雇用による人件費の増加分が、顧問料その他の弁護士費用の減少分より小さくならないと、経済的メリットに至らないでしょう。もっとも、この図式からは、インハウスの給料が低下すればその雇用機会は増えるでしょうし、実際そうなっていると見えます。

こうして、一定規模の組織になると法律事務を内製化していくので、顧問弁護士の仕組みは縮小に向かうことが予想されます。顧問料を収入の基盤として経営を安定させていた弁護士には、インハウスの普及による影響は大きいかもしれません。

私には余り関係ないですけどね。

と思っていたら、近年、顧問先が減る事象が生じたことはあるので他人事ではありません。

一応その原因は企業の再編に基づくものです(表向きの原因と言わないで下さい…)。企業自体やその拠点が減ることで顧問先の取り合いが発生する事象は、今後も次々と出て来るのだろうと思います。

 

インハウスからの転身

なお、インハウスは今後も普及していくでしょうが、いざ街弁へ転身しようとすると、全く職務内容が違うので結構辛そうです。

このところ、そんなキャリアパスを経た後輩から質問攻めされています。「現地調査はどんな格好をしていくべきでしょうか?」などという質問を聞いて目が点になったりしてるのですが、とても大変そうなので懇切丁寧に答えています。

私も先輩方には無茶な質問をしてきましたし、誰しも初めての仕事では通る道なので奮闘を期待したいところなのですが…。

 

まとめ

突発的な弁護士費用の負担が嫌がられるとすれば、それを保険で賄う発想になじみやすいところがあるので、弁護士保険の普及には一応期待したいところです。

無論、色々課題はあるとは思いますが。

そして、インハウスの普及は弁護士増員の必然的な動向です。これは従前の弁護士資格そのものの変容、すなわち法廷中心の業務の衰退をもたらして行くのでしょう。

そのような事態の当否はともかくとして、一旦インハウスで就職すると所属組織に関わる事項や関連法令には詳しくなるものの(もちろん大変特殊な能力です)、いざ転職しようとすると大変だとかこちらも色々課題はありそうです。