日本産ワインの産地表示

平成28年5月4日の北海道新聞に次のような記事がありました。

国税庁が昨年10月にワインのラベル表示のルールを初めて定めたことで、道内のワインメーカーが表示変更などの対応を迫られている。地域名を表ラベルに記す場合、その地域で収穫したブドウを使い、同じ地域で醸造しなければ、ワイン名が制限されるためだ。新ルールが適用される2018年10月30日までに、道内外で愛されてきた「おたるワイン」「十勝ワイン」など、一部銘柄の呼び名が変わることになりそうだ。

なるほど、そうなると地元民として気になるのは例のワインのことなんですが、この記事には次のようなことも書いてありました。

十勝管内池田町が1963年から醸造する「十勝ワイン」も町内産ブドウのみを使う「清舞」「山幸」などを除くと、多くの製品が新ルールに触れてしまう。後志産ブドウや輸入ワインなどを使っているためだ。

同町は「半世紀以上の歴史ある名称がないと、逆に消費者の混乱を招く」として「十勝ワイン」の表記を残す考え。新ルールは消費者に誤解を与えない範囲で地名を含んだ製造者名を記すことが認められており、表ラベルの製造者名を現在の「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」から、「十勝ワイン」も用いて町営と分かるような名称に変更することを検討している。

 

産地表示の新ルール

というわけで、これは由々しきことですので新ルールがどう定められているのか気になるところです。

まず、「日本ワイン」について次のように定義されます1

「日本ワイン」とは、国内製造ワインのうち、酒税法第三条第十三号に掲げる果実酒…で、原料の果実として国内で収穫されたぶどうのみを使用したものをいう。

次に、地名の表示が可能な基準については次のように定められています2

国内製造ワインに地名を表示する場合は、…日本ワインに限り、次の各号に掲げる地名のみをその容器又は包装に表示できるものとする。
(1)原料として使用したぶどうのうち、同一の収穫地で収穫されたものを85パーセント以上使用した場合の当該収穫地を含む地名(表示する地名が示す範囲に醸造地がない場合には、「○○産ぶどう使用」など、ぶどうの収穫地を含む地名であることが分かる方法により表示するものとする。この場合において、「○○」については、当該ぶどうの収穫地を含む地名を記載するものとする。)
(2)醸造地を含む地名(醸造地を含む地名であることが分かる方法により表示を行うとともに、別途、ぶどうの収穫地を含む地名ではないことが分かる表示を行うものとする。)

 

十勝産のワインについて

さて、このとおり十勝の池田町ではぶどうを栽培して町自らワイン醸造をしていますが、記事の指摘のとおり、生産されるワインには、町内産のぶどうで醸造するものと、北海道の他の地域(余市など)で収穫したぶどうで醸造するものと、輸入ワインを原料として用いているものがあります。

そうすると、今後、十勝産のワインについて地理的表示の指定がなされた場合には、「十勝」を名乗って良いのは上記のうち町内産ぶどうで醸造するもののみということになりそうです。

醸造所が十勝にあれば、ぶどうが余市産だとしても「十勝醸造ワイン」のような名称は可能ですが、その場合も「十勝は原料として使用したぶどうの収穫地ではありません」といった表示を要します。

また、輸入ワインが原料に入っていると地名を名乗るのはいずれにしてもダメです(「日本ワイン」の要件を満たしていないから)。この場合は地名を名乗れませんので、その表示をどうするかという難題が生じそうです。

但し、国税庁の通達では3

会社名、組織名又は個人事業者等の商号について、「株式会社」、「(株)」、「商号」等の表示を併せて行うなど、会社名等として消費者が容易に判別できる方法により表示している場合

には地名を含む組織名等の表示はできるとのことですから、前述の報道はこの通達に基づき地名の表示を検討しているように読めるのですが、製品によっては従前と同様の表示を続けるには色々とハードルがありそうです。

 

表示規制の影響

以上、他の所からぶどうを仕入れるなどして相応の規模でワインを生産していた既存の醸造業者には、今回の告示は影響が大きそうです。

ただ、最近は道内でも増加しているようですが、ぶどう畑の傍らで醸造しているといったような形態の小規模なワイナリーには、産地とワインとの関連性をアピールしやすくなるので、それは良いことかもしれません。

もちろん、今回の告示による規制は、原産地やぶどう品種の他にも醸造法や収量等まで厳格な規制をしているフランスの原産地呼称統制(AOC)に比べればまだまだ緩いものでしょうが、それでも、地域とワインの関連性を紐付けて表示することにより、消費者からの信頼を高めると共に、全体的な品質の向上につながるのであれば、評価できることかと思います。

 

 



  1. 果実酒等の製法品質表示基準を定める件(国税庁告示第十八号) 

  2. 例として、国税庁ウェブサイト「果実酒等の製法品質表示基準について(ワインのラベル表示のルール)」(PDF) 

  3. 国税庁ウェブサイト「果実酒等の製法品質表示基準の取扱い」 

2016-05-13 | カテゴリー : コラム | 投稿者 : Yoshitada Iwata