破壊活動防止法に強い弁護士

dsc_3355.jpg釧路弁護士会では、この度、長年の課題となっていた会誌の発刊を行うこととなりました。

この会誌には、1880年の根室代言人組合の設立から、現在に至るまでの当会の辿った様々な歴史が述べられているのですが、その中でもとりわけ興味深い出来事としては、破壊活動防止法違反で起訴された事件の弁護活動に弁護士会を挙げて取り組んだということがあります。

 

 

破壊活動防止法違反で検挙された事件は、昭和27年に同法が施行された直後に全国各地で発生しています。釧路でも、いささか刺激的な内容の文書を配ったということで共産党員2名が逮捕され、破壊活動防止法違反の罪名で起訴されました。

ところで、文書の頒布に対して適用があるとされた破壊活動防止法38条2項2号とは、このような条文です。ここで刑法第七十七条というのは、内乱罪のことです。

左の各号の一に該当する者は、五年以下の懲役又は禁こに処する。
 (略)
 刑法第七十七条 、第八十一条又は第八十二条の罪を実行させる目的をもつて、その実行の正当性又は必要性を主張した文書又は図画を印刷し、頒布し、又は公然掲示した者

 

さて、この事件は、釧路の会員が一丸となって弁護を引き受け、当該事件に対する破壊活動防止法の適用を争いました。そして全国的に第1号となる無罪判決を得ています(判例時報36号3頁)。破壊活動防止法違反により起訴された同種の事件では、その後も、津、京都、岐阜などの各地で無罪判決が続くことになりました。

 

この事件を今の時代から振り返ってみると、興味深い点が二つほどあります。

 

まず一つは、党派的な立場に関係なく弁護士が対処したことです。

釧路の会員には自民党の支部長を務めるような方もいたのですが、皆協力しています。釧路の弁護士は、文字どおり党派的な立場を超えて、表現の自由を萎縮させる法律の適用に危機を感じて異を唱えたのでした。

昨今の時勢では、政権批判の言葉を市議会の広報に載せないようにおもねる党派もあるように聞こえてきますし、一方で、強制加入団体なんだから政治的活動をするなとの声も聞こえてくることがあると思うと、先人達の見識の確かさにはただただ感嘆するばかりです。

 

もう一つは、ごく当然のようにも思われるのですが、裁判所が適用を認めない法律は機能しないということです。

制定時より問題のある法律であると考えられていた破壊活動防止法ですが、いまだにその運用は制限的に見えます。そのような実態となっているのは、制定後ほどなく各地で次々と無罪判決が出されたことの影響も否定し難いように思います。

もちろん、訴訟当事者が頑張らないと裁判所も正しく判決できませんから、釧路の諸先輩方が第1号事案で無罪判決を勝ち取ったことは大きな意義があります。辺境の地であっても、弁護士の活動が法の形成に寄与する局面もあり得るとすれば、先人の心意気を受け継いでいかなければならないと改めて思います。

 

その他、会誌には他にも面白い記事もありますので、別の機会にでもまた紹介できればと思います。なお、各地の弁護士会宛には少なくとも1冊は配布しているはずですので、どうしても気になる方はお手にとって眺めていただければ幸甚です。