街弁と渉外業務

2003年10月、弁護士登録後まもなく訪れたアメリカ合衆国最東端のメイン州イーストポート。小さな宿で朝食を取っていると他のゲストから自己紹介を求められ、こんなやりとりをしたことが。

「私は弁護士です。」
「お前本当に弁護士なのか?随分若そうに見えるが。」
「ええ、マジで弁護士です。我が国ではロースクールに行かなくても司法試験を受けられるので、比較的若い人でも弁護士になれます。」
「お前の専門は何だ?企業法務か、税務か、それとも刑事弁護?」
「合衆国は人口3億で100万人の弁護士がいると聞きましたが、我が国では1億2千万人に対し2万人しか弁護士はいません。だから日本の弁護士は、企業法務も税務も刑事事件も何でもやります。」
「・・・・・・。」

アメリカ人には日本の司法制度は理解し難かったようです…

そのころなら日本の司法制度について何とか英語で説明できたようなのですが、最近はさっぱりダメです。弁護士の仕事を始めて11年目となりますが、ほぼ全ての仕事が日本の法律に基づく処理を行うべき法的紛争に関するものです。外国人に関する事件や、外国法が関係する事件はほとんどありません。

 

ところが、最近は、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)の批准に伴い、各地でハーグ条約案件を扱える弁護士を確保すべき要請が生じたりしているようです。幸いにして釧路弁護士会には、語学が堪能な会員も居ることからこの課題はクリアしていますが、普段の仕事で外国と関わることがどの程度あるのか触れてみたいと思います。

 

外国人の依頼者の事件はほとんどありませんが、稀に外国人の国選弁護事件が来ることがあり、中国人の被告人の弁護をした経験は何度かあります。私は第二外国語は中国語でしたが、会話は無理です。中国語の通訳の方は帯広でも確保できますので、お願いして接見に同行して頂くのですが、方言がネックになります。南方や北方の人だと、方言がきつくて意思疎通は大変なようです。

 

最近の出来事としては、外国弁護士から英語の催告状が届いたり、外国債権者がやってきたり、日系の保険会社に保険金を請求したら関係書類が全部英語だったりしたことがあります。損害保険も自動車保険以外の扱いはほとんどありませんので、英語の書式の請求書類などは見たこともなく、読み解くのに骨が折れましたし、外国債権者が来てもせいぜい Nice to meet you! くらいしか言えないので、忸怩たる思いをしなかったわけではありません。

 

そのような訳で、時代の趨勢というべきか、突如として渉外案件に出くわすことは少しずつ増えているように思います。ただ、この分野はちょっと一般の弁護士が取扱うには特殊に過ぎるように思っています。法体系や法制度、あるいは政治システムが独特な国もあるので、よほど腕に覚えがない限り、適正な取扱には困難が生じるでしょう。逆に、これらに精通している人や、これから身につけようという意欲のある人ならチャンスが広がってくる分野なのかもしれません。

当職も対策をしなければなりませんが、英語を勉強し直して留学するのも現実的ではなく、唯一の対策は「渉外業務に詳しい弁護士とお友達になっておく」ことかと悟っています。そこで、そのようなお友達はいつでも募集中ですので宜しくお願い申し上げます(いつ仕事を紹介できるか分からないのが難点ですが…)。