犬も食わない分限裁判

東京高裁の岡口基一判事が分限裁判による懲戒の申立をされたということで、ご本人自らその記録を公開しておられる。以下のリンク先にあるとおりである。

分限裁判の記録 岡口基一
https://okaguchik.hatenablog.com/

 

裁判官と表現の自由

岡口判事の投稿するツイートに関しては当たり外れがあり、例えば、当職もブリーフでパンイチになっている姿を見たいと思うわけではない。また、現職の判事が、他の裁判内容や政治的な事件について、どこまで投稿できるだろうかと思ったことも、ないわけではない。

だが、判事の職にあるからといって、何も言えないということにはならない。

それに、実名で裁判官であることを明らかにした上で日頃から表現活動を公開している人は稀であるから、岡口判事の活動には敬意を払っていた。裁判官にもそのような人がもっと多く出るべきであると思うし、静まり返っている状況は不自然に思えてならない。

もっとも、組織の人間は余計なことなど言わずにひたすら黙ってろ、というのが社会の多数派ではあるのかもしれない。

本来は自由であるにもかかわらず、ひとたび何かを言おうとすれば、実にこの世は生き辛いのである。

 

統制的な司法の在り方

今回、懲戒申立の理由とされたのは、犬の返還請求事件に関する岡口判事のツイートである。

このような事件だったようだ。
https://sippo.asahi.com/article/11544627

犬の取り合いとなった訴訟を紹介する岡口判事のツイートの内容が、元の飼い主の感情を傷付けたというようなことが懲戒の理由としては主張されている。しかし、岡口判事のツイートに書いてあったこと自体は、当事者の主張の要約と取れる内容に過ぎない。

むしろ、当該訴訟の報道から読み取れる限りでは、元の飼い主が勝訴したからといって非がないなんてことはない事案である(なお、岡口判事はそこまで言及していない)。

だが、たまたま訴訟当事者からクレームが付いたことを口実に、岡口判事を処分してやれという空気があるのだろう。裁判所内部では、あいつのツイートのせいでクレームを言って来る奴が次々出てきて超迷惑だから何とか黙らせろ!と思っている人が多いのだと思う。しかし、懲戒の申立まで至るのでは、さすがに萎縮効果が著しい。そのようなゴタゴタをしっかり見ている人たちからは、裁判所は信頼されなくなると思う。

我が国では、裁判所の権力基盤がなお脆弱だという現状認識に基づいて、他からの干渉を避けるべく強度に統制的な司法行政を行うことも正当化されると考えられているのかもしれない。しかし、それでは陰湿で窮屈な職場だということで、長期的には優良な人材に避けられるという問題が出るように思う。また、統制の方向性次第では政治部門との違いがなくなり、裁判所固有の役割を失うことにもなる。

そんなことで司法の機能が損なわれては司法の不幸であるし、結局は、国民の不幸でもある。

 

まとめ

以上、市民としての自由を十分に保持したいと思う人は裁判官にならない方がいいよ、というのがこの騒動の率直な感想である。自由を擁護すべき人には自由はない、という現代日本の不思議がそこには存在する。

岡口判事が再び元気にツイートされる姿(但しブリーフ姿を除く)を見られる日が来ることを願っている。