行政活動とのかかわり(2)児童相談所

児童相談所に弁護士を配置する方針を厚生労働省が固めたということのようで、先日の日弁連の臨時総会で最後に挨拶した会長がそのようなアピールをしていました。

これに対して、私の後ろの方から何かヤジを飛ばした人がいたみたいなんですが、確かに、日弁連が手柄としてアピールするような話なのかという気がしないではありません。

さて、既に多くの地域で児童相談所の活動に弁護士が関与する仕組みは整えられてきており、実は当職も帯広の児童相談所からの委嘱を受けて、児童虐待対応プロジェクトチームの専門委員を長らくやっています。

ただ、どのような形で弁護士が関与しているのかという点については、余り知られていないように感じることがしばしばありましたので、少しご紹介したいと思います。

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何をやっているのか

児童相談所で判断に悩む事案に関してはプロジェクト会議が開かれており、児童相談所の職員と医師(例えば、産婦人科医・小児科医・精神科医など)及び弁護士が協議して方針を決めています。これは、問題が発生すれば随時行われます。

問題となることが多いのは、児童相談所長の採る措置のうちでも、児童の一時保護を行うことや(児童福祉法33条)、保護者の意思に反して児童を施設に入所させること(同法28条1項1号、27条1項3号)です。

保護者の同意があれば良いのですが、合理的な理由もなく児童の一時保護や施設入所を拒絶されることはあります。その場合にも児童相談所の判断で子供を保護者から引き離せるかという問題があります。

親子関係を引き離すわけですからその性質としては重大な措置です。

ですから、児童相談所の職員は、これらの措置を取るに当たって慎重に気を遣っているように見えます。

その場合にゴーサインを出しても問題ないかどうか、ということを主に協議することになります。

医師の先生方は専ら医学的な観点から、弁護士は専ら法的な観点からの指摘を行います。特に、保護者側から不服申立がなされても耐えられるかといった点は事案に即して見ていく感じになります。冷静な判断は必要ですが、根拠があれば可能な限りの対応を促すこともあります。

また、児童相談所の調査能力は高いのですが、裁判所の判断の仕方については必ずしも慣れていないように見えることもあります。そのため、裁判所が関与する手続1に入った場合には、どのような主張をして、どのような証拠を集めたらよいか、という観点から助言を行うこともあります。こういった助言ができるのは、司法修習で裁判所の判断の仕方もきちんと見てきた(はずの)弁護士ならではのことだと思います。

感想

ということで、児童相談所の業務に弁護士が関わること自体は、非常に意味のあることです。今後、弁護士を常置させるということが実現すれば、児童相談所の職員が権限行使に当たって日々悩んでいる点について迅速な対応ができるようになるという意味も大きいでしょう。

ただ、弁護士の業務拡大という文脈でこれを語られることについては、率直なところ違和感を覚えております。目立って業務が拡大するというイメージでもないとは思います。

児童相談所の権限行使が適正になされるようにすることは、子供に関する問題についてより適正な扱いがなされるということでもありますから、意義のある仕事です。関係者の基本的人権への配慮を行いつつ行政活動の実効性を確保するという難しいバランスの舵取りについて、今後も弁護士が関わっていくことは大切であると思います。


  1. 例えば、家庭裁判所による承認(児童福祉法28条1項1号)がある。 

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