帯広市議会での趣旨説明(特定秘密保護法の廃止を求める陳情)

過日、帯広市内の弁護士有志にて、特定秘密保護法の廃止を求める決議をするよう帯広市議会に陳情を行ったところ、参考人を出すよう市議会から依頼がありました。たまたま色々やっているのでお前が行ったらどうだというようなことになり、平成26年7月31日に開催された帯広市議会総務文教委員会に出席して、陳情の趣旨を説明して参りました。

以下はその要旨になります。

本日は趣旨説明の機会を賜りありがとうございます。私は、平成15年より帯広にて弁護士業務に携わり、現在は、釧路弁護士会の憲法委員会の委員長、及び日本弁護士連合会憲法問題対策本部の委員を務めております。

この度の陳情の趣旨はお手元の意見書案のとおりでございますが、補足して本法の憲法上の問題点及び当市への具体的な影響についてご説明を申し上げます。

本法においては、何が「特定秘密」に当たるかは法文上不明確な上、秘密指定自体の是非をチェックする第三者機関を設けることも想定されておりません。法18条で第三者機関を設置することにはなっていますが、運用基準のチェックに過ぎません。従いまして、恣意的に秘密指定がされる危険性があることは避けられないところです。そうすると、何をしたら処罰されるのかということが分からない状況にもなりますから、刑罰法規の明確性を要求する憲法31条に違反するものと考えられます。

また、本法は一定の情報を特定秘密として扱うこととしていますから、国民はそれらの情報にアクセスできないことになります。必要な情報が手に入らなければ、有権者は適切な政治的判断ができなくなりますから、民主制のシステムの健全性を損ないます。本法には多くの懸念の声が出されておりましたが、その規制の重大性に反比例するかのように十分な国会審議を尽くされないまま成立しています。その審議時間は、衆議院において約46時間、参議院において約22時間に過ぎません。本法は、憲法21条で保障された表現の自由及びそこから派生する報道の自由、取材の自由、そして知る権利を侵害するものと考えられます。

次に、当市における具体的な影響として懸念されることについてご説明いたします。

当市は287億円もの全国有数の農業生産高を誇っており、TPPは死活的な問題となっております。TPPの交渉は各国と秘密保持契約を結んで行っているところでありますから、これも外交上の秘密に指定される可能性があります。そうすると、情報を採ろうとして活動すると教唆罪で処罰される恐れがありますから、必要な情報が全く入手できなくなる可能性があります。情報が入ってこなければ、我々も意見を述べることが出来ないまま交渉が進んでいってしまい、意に沿わない条約が締結される可能性もあります。

また、当市は陸上自衛隊第5旅団を擁する自衛隊の街であります。ところで、自衛隊に関する事項は、防衛関係の特定秘密に指定される可能性が高いと思われます。そうすると、適正評価の対象となる自衛官が、他の市民との交流をためらったり、自衛官以外の市民も自衛官との接触を避ける恐れがあります。自衛隊の隊員も当市に居住する限り当市の市民でありますから、その他の市民との相互交流は不可欠であると考えますが、その機運を損なうことになり、市民相互の雰囲気も悪くすることが予想されます。

このように、本法は帯広市民にも具体的な影響もあり得る法律ですから、党派的な意見を超えて、市民的な問題としてのご検討を頂きたいと存じます。

最近何かと話題になることも多い地方議会でありますが、この後に行われた質疑応答は割と突っ込んだ内容でした。

私としては、国家機密が必要な場合があるとしても、この法律は機密と知る権利とのバランスを著しく害している内容であるために致命的な欠陥があり、その施行は相当ではないという考え方に基づいてご説明をさせて頂いたところであります。なんとか乗り切ったという感じですが、引き続きしっかり勉強しなければと思った次第です。

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