実務修習の心得

私が司法修習をしていた際の民事弁護教官が、実務修習に我々を送り出す前にユニークなアドバイスをしてくれたことを記憶しています。

それはどのようなものかというと、

どんな質問でも良いから毎日1つ質問をしよう!
こんなチャンスは2度とない。

というものでした。意外とシンプルなものです。

質問は難しい

ところが、質問をする、というのは意外に難しいです。不勉強で尋ねる訳にもいきませんし、気遣いが要ることもあります。実際は、平均すればアドバイスに従えたかどうかという程度だったかもしれません。ただ、そのような心掛けで色々な質問をすることで、他では得ることのできない知見を得ることができたと思います。

ちなみに、質問の例として民弁教官が挙げていたのは、月並みなところでは「先生の期は何期ですか?」などでしたが(会話の取っ掛かりにしましょうとの趣旨)、その他、執行官室での修習があったら「執行官の収入はどのくらいですか?」と聞いてみると良いですよ、などというのもありました(執行官は手数料で収入を得ている点が特殊だという前提でした。)。

私の弁護修習

私自身も、実務修習中は失礼な質問と思いつつ、色々な質問をさせて頂いたものです。弁護修習では、損保会社の仕事を多く扱う事務所に配属されましたが、「他の弁護士から敵視されませんか?」だとか、「社内弁護士を使って事案処理したほうがコストは低いんじゃないですか?」とか、今にして思えば無礼なことばかり尋ねていました。それでも、一つも嫌な顔をせずに丁寧に答えて頂いた指導担当弁護士には今も感謝しています。

以前、損保と弁護士というコラムを書きましたが、その内容も、実務修習中に教えを頂いたことを基礎にして、仕事をしていく中で私なりに思い至ったことをまとめたものです。

実務の世界の道しるべ

司法修習で経験したことは、実務に入っても何度となく思い出します。その記憶が、暗黒星雲の中をさまようような実務の世界で一筋の光明となり、進むべき道を照らしてくれることもしばしばです。そういえば、民弁教官も事案を解明して主張を組み立てていく過程を喩えて「暗黒星雲理論」(?)と名付けていました。

かの民弁教官は故人となってしまいましたが、星雲の彼方から、人によっては期待しながら、あるいは、人によってはハラハラしながら(私もこちらのカテゴリーでしょう)、今も教え子たちを見守ってくれているのではないかと思っています。

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