事業承継と弁護士関与(3)特例事業承継税制

事業承継で税理士さんが圧倒的に相談相手となることが多いのは、会社のお金の問題について普段から知っている税理士さんの方が相談し易い、ということがある。

税務は一般的な弁護士には特殊である。もちろん、税金も法律問題なので弁護士が知っていなければならないことは少なくないが、慣れないところに手を突っ込んで業務拡大というのではいささか宜しくない。

 

特例事業承継税制の件

さて、税制の問題は事業承継の問題を考える入り口になるということで、税理士さんサイドでは、いわゆる特例事業承継税制を案内をする活動が盛んになされていた。

もちろん、当職も、オープンな機会をとらえて税理士さんや会計士さんの話を聞きに行ったりしていた(ただし、こっそり聞いていたら顔バレしていたようであった…。)。

特例事業承継税制の制度を極めて大雑把に言えば、とりあえず(2018年4月1日から)5年以内に特例承継計画を出して、(2018年1月1日から)10年以内に承継を実行していれば、贈与した株式に対する贈与税が猶予されるというものである。

詳しいことは税理士さんに聞いていただきたい。

なるほど、とりあえず税金払わなくて済むというなら、今はファミリービジネスの承継を考えるには絶好の機会である。

   

特例事業承継税制の問題点

ただ、特例事業承継税制の制度を観察してみると、そんなに良い制度でもないような気がしている。

その理由の一つとして、企業の柔軟性を損なうことがある。

企業を現状維持する向きにはこの制度はマッチするが、同族の議決権が過半数を割るとか合併による解散などによって取消事由が発生した場合(その他にも色々と重要な取消事由がある)、利子税を加えて税金を払わないといけない。そうすると、会社の在り方が大きく変わると見込まれるような場合、その足かせとなりうる。

それなら最初から税金払ったほうが自由度が高いのでマシだ、という局面の企業も結構あると思う。

もう一つの理由として、この制度によって非効率な資本が社会に温存され易くなることがある。

経営者ファミリーはその地位を確保できるメリットを享受できるだろうが、それは競争的であるとはいえない。しかも、今回の制度では雇用維持の要件が事実上ないようなものなので、雇用も生まない資本が残り続けることにもなる。それで企業が生き長らえても、社会的な意味が果たしてあるのかどうかとは思う。

制度を使うかどうかはともかく、個人の感想である。

   

まとめ

以上、特例事業承継の制度は、恩典はそれなりにある半面、使い勝手が良い感じが余りしない。とはいえ、うまく使えそうな人なら使うのがよいと思う。

そして、この制度を導入して最後までやり遂げるには継続的にややこしい手続が生じてくる。そういう点では、普段から顧客に接する機会が多い税理士さんが関与するのがほぼ必然的な制度だと考えている。

(つづく) 

 

 

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